【ルネサス技術コラム】マイコン講座② RL78マイコンを活用したAD変換の基礎と開発手法

マイコン講座②

マイコンは、自動車や家電、産業機器など、私たちの身の回りにあるさまざまな電子機器に搭載されています。本講座では、マイコンに備わる代表的な機能である「AD変換」をテーマに、マイコンの基礎知識と、Renesas製RL78マイコンを用いた開発手法について解説します。

本講座のテーマは、「AD変換機能を通じてマイコンの基礎を理解するとともに、RL78マイコンのAD変換機能を活用し、開発手法を学ぶ」ことです。ゴールとして、マイコンの基礎、Renesas製RL78マイコンの特徴、AD変換の手法、さらにハードウェア・ソフトウェア・開発環境の役割を理解することを目指します。

AD変換とは

AD変換とは

AD変換(Analog to Digital変換)とは、アナログ信号をデジタル信号へ変換する技術です。自然界の情報は電気や音、重さなど時間とともに変化するアナログ情報ですが、マイコンなどのデジタル機器で処理するためには、「0」と「1」のデジタルデータへ変換する必要があります。

このAD変換は、デジタル家電や自動車、電子機器など幅広い製品で利用されています。特にセンサーやスイッチから入力されるアナログ信号は、マイコンに搭載されたADコンバーター(ADC)によってデジタル化され、さまざまな制御やデータ処理に活用されています。

AD変換を支えるマイコンの基本構成

マイコンの内部構成

マイコン(Micro Controller Unit:MCU)は、電子機器を制御するための小さなコンピュータです。CPUを中心に、タイマやRTC、内蔵メモリ、ADコンバーター、汎用I/Oなど、さまざまな機能が1つのICに集積されています。AD変換を行う際には、その中でもCPU、内蔵メモリ、ADコンバーター、汎用I/Oが重要な役割を担います。

CPU

CPUとは

CPU(Central Processing Unit)は、マイコンの「頭脳」にあたる部分です。メモリに保存された命令を読み出し、その内容を解釈しながら演算や制御を実行します。CPUの性能は、一度に処理できるデータ幅(bit数)、CPU動作周波数、そして搭載するCPUコア数などによって決まります。用途に応じて適切な性能を選択することが重要です。

ROMとRAM

ROMとRAMのイメージ

マイコンには、役割の異なる2種類のメモリが搭載されています。
ROM(Read Only Memory)は、プログラムなどを保存する不揮発性メモリで、電源を切ってもデータは保持されます。一方、RAM(Random Access Memory)は、演算中のデータなどを一時的に保存する作業領域であり、電源を切ると内容は消去されます。RAMはアクセス速度に優れ、ROMは大容量化しやすいという特徴があります。

 ROMとRAMの違いは、「本棚」と「机」に例えることができます。必要な本(データ)を本棚(ROM)から取り出し、机(RAM)の上で作業を行うイメージです。机が広いほど複数の資料を同時に広げて効率よく作業できますが、作業終了後や電源を切ると机の上は片付きます。一方、本棚の本はそのまま残り続けます。

I/OポートとADコンバーター

I/O Portとは

マイコンが外部機器と信号をやり取りするためには、I/Oポートが必要です。I/Oポートには、GPIO(汎用入出力)、アナログ信号入力、タイマ出力、シリアル通信など、さまざまな種類があります。LEDやスイッチ、センサー、通信機器、モーターなど、多様な外部機器との接続に利用されます。

A/Dコンバータとは

ADコンバーター(ADC)は、アナログ信号をデジタル信号へ変換する機能です。温度や湿度、光、圧力などのセンサー情報や、音声信号、電池電圧などをデジタルデータとして扱えるようにします。入力された電圧は分解能に応じて数値化され、マイコンが演算や制御を行えるデータへ変換されます。センサーを活用するシステムでは欠かせない機能の一つです。

Renesas製RL78マイコンでAD変換を実践

ここからは、実際にRenesas製RL78マイコンを使用したAD変換について紹介します。

AD変換を行うために必要な機能

AD変換を行うためには、ADコンバーターだけではなく、ソフトウェアを実行するCPU、プログラムを保存するROM、演算結果を一時保存するRAM、アナログ電圧を入力するI/Oポートが必要です。これらの機能はすべてマイコンに搭載されており、I/Oポートから入力されたアナログ電圧をADコンバーターでデジタル値へ変換し、その結果をCPUが処理する仕組みになっています。

Renesas製RL78/F25マイコンを使用

本講座では、Renesas製「RL78/F25」マイコンを使用してAD変換します。

RL78マイコンの各種開発環境

RL78/F25は車載用途向けRL78シリーズの最上位ラインアップで、40MHz動作のRL78-S3 CPUコアを搭載しています。また、512KBのCode Flash、16KBのData Flash、40KBのRAMを備え、12bit ADコンバーターやCAN、LIN、シリアル通信、最大90本の汎用I/Oポートなど、多彩な機能を搭載しています。さらに、車載用途向けとして−40℃~125℃の動作温度保証に対応し、機能安全規格ASIL-Bやセキュリティ規格EVITA-lightにも対応しています。

評価ボードと開発環境

ソフトウェア開発ツールとRL78マイコンの接続

AD変換の実演では、RL78/F25 Target Boardを使用します。この評価ボードには、マイコンの評価に必要な電子部品や、開発ツールを接続するためのコネクタなどが実装されており、RL78/F25の機能を評価・開発できる環境が整っています。

 ソフトウェア開発には、統合開発環境「CS+」、コード生成支援ツール「Smart Configurator」、コンパイラ「CC-RL」、エミュレーター「E2」、プログラマ「Renesas Flash Programmer(RFP)」を使用します。これらのツールを組み合わせることで、ソフトウェアの作成からビルド、マイコンへの書き込み、デバッグまで、一連の開発を行うことができます。

AD変換ソフトウェア開発の流れ

AD変換を行うソフトウェア開発の手順

AD変換ソフトウェアは、まずCS+でRL78/F25用の開発プロジェクトを作成し、Smart ConfiguratorでAD機能やポート機能を設定してソースコードを自動生成します。その後、必要な処理を追加コーディングし、CC-RLコンパイラでオブジェクトコードへ変換します。

 続いて、CS+のデバッグモードからRenesas Flash Programmerを使用してマイコンのFlashメモリへ書き込み、最後にRL78/F25のADポートへアナログ電圧を入力してAD変換を実行します。このような流れで、開発から動作確認までを進めていきます。

ルネサス製RL78シリーズのラインアップ

ルネサス製RL78シリーズのラインアップ

ルネサスでは、用途に応じて選択できる幅広いRL78シリーズを展開しています。
今回使用したRL78/F25は車載用途向けの最上位ラインアップですが、このほかにもボディ制御向けや汎用用途向けなど、多様な製品が用意されています。それぞれ必要な機能や性能に応じて選択できるため、自動車をはじめとするさまざまな組み込み機器の開発に対応できます。

まとめ

本講座では、AD変換の基本的な仕組みを通じて、マイコンを構成するCPU、ROM、RAM、I/Oポート、ADコンバーターの役割を解説するとともに、Renesas製RL78/F25マイコンを用いたAD変換の開発手順を紹介しました。

 AD変換は、センサーから取得したアナログ情報をマイコンで処理するために欠かせない機能です。本講座で紹介した基礎知識と開発の流れは、マイコン開発を理解する第一歩として活用いただけます。