設計現場で使えるSSC入門-産業・車載アプリ事例とデバイス選定、サポートツール解説-
近年、センシング技術は自動車、産業機器、インフラ、IoTなど幅広い分野で活用されています。
本記事では、SSC(Sensor Signal Conditioner)の基礎から、産業・車載アプリケーション、対応製品、サポートツールまでを体系的に紹介します。
Renesasは、特に組み込みシステム向けの半導体製品を幅広く提供しているメーカーです。
注力分野は、
・自動車
・産業機器
・インフラ
・IoT
の4領域です。
また、センサからアクチュエータまで、信号チェーン全体をカバーする製品群を展開しています。
「計測する」「つなぐ」「処理する」「動かす」という一連の流れを支える中で、SSCはセンサのすぐ後段に位置する重要なデバイスです。
RenesasはIntersil、IDT、Dialogといったアナログ技術に強い企業を統合し、製品ポートフォリオを拡大してきました。SSC製品については、センサ技術に強みを持つZMDIの技術がベースとなっています。ZMDIは2015年にIDTへ統合され、その後2019年にRenesasがIDTを買収したことで、現在のSSC製品へ技術が引き継がれています。
SSC(Sensor Signal Conditioner)は、センサ素子から出力される信号を調整するICです。
センサから得られる信号は、
・微弱である
・入力と出力の関係が直線にならない
・温度によって変動する
・基準点がずれる
といった特徴があります。
SSCは、こうしたセンサ信号に対して、
・出力レベルの増幅
・線形化
・オフセット補正
・温度補正
を行い、安定した出力へ変換します。
つまり、SSCは物理量を測るセンサと、その後段の制御・演算回路の間に入り、“使える情報”へ整える役割を担っています。
測定対象となる物理量には、
圧力、トルク、加速度、角度、流量、温度、湿度、水位、近接、ガスなど、さまざまな種類があります。
それぞれ、
・抵抗式
・容量式
・磁気抵抗式
・光学式
・誘導式
など異なる原理でセンシングされています。
代表例として圧力センサには、
「ピエゾ抵抗方式」:圧力で膜が変形し、抵抗値が変化する方式
「容量方式」:圧力によって電極間距離が変化し、静電容量が変わる方式
「圧電方式」:材料へ力を加えることで発生する電圧を利用する方式
があります。
SSCは、このような多様なセンサ方式に対して共通して信号調整を行います。
実際のセンサは理想的な出力にならないため、補正処理が必要になります。
温度変化や個体差によって
・オフセット変動
・感度変動
・非線形性
が発生します。
SSCはこれらを補正し、より線形で扱いやすい信号へ変換します。
動作としては、
1. AFE(アナログフロントエンド)で信号取得・増幅・デジタル化
2. 内部演算ブロックで補正処理
3. アナログまたはデジタル出力
4. 必要に応じてキャリブレーション
という流れになります。
キャリブレーションでは、
① 基本設定を書き込み
② 圧力・温度条件で測定
③ 補正係数を演算
④ 内部メモリへ書き込み
という工程を経て、センサ固有の特性に合わせた補正を実施します。
RenesasのSSCは25年以上にわたり進化を続けています。抵抗式、容量式、磁気式、超音波式、誘導式、光、ガスなど、多様なセンシング方式へ対応領域を広げてきました。
また、ソフトウェア、補正アルゴリズム、ボードレイアウト、量産キャリブレーション、EMC/EMI対応まで含めた知見が蓄積されています。
現在は、アナログ出力に加えて各種デジタルインタフェースへ対応した幅広い製品群を展開しています。車載用途ではブレーキやサーマルマネジメント、産業・民生用途では家電、医療、Industry 4.0、ロボティクスなど、さまざまな領域で活用されています。
産業用途では、圧力、流量、温度など、多様なセンシングニーズがあります。
市場としては、
・HVAC
・ウォーターポンプ
・ホワイト家電
・医療
・油圧・空圧
などで需要拡大が見込まれています。
用途例として、
ビルディングオートメーション:エアコンの圧力センシング
ファクトリーオートメーション:ロボットのフォースセンシング、トルクセンシング
ホワイト家電:洗濯機や食洗機の水位検出
メディカル:透析機器の流量検出
などがあります。
用途ごとに必要な精度や柔軟性に応じて、対応するSSC製品が用意されています。
産業用途では、計測対象やセンシング方式に応じて製品が選択できます。
代表的な製品として、
・ZSSC3241
・ZSSC3281
・ZSSC3286
があります。
また、
・シングルブリッジ対応
・デュアルブリッジ対応
・低消費電力モデル
・IO-Link対応
など、用途に合わせた構成を選択できます。
製品はパッケージだけでなく、ベアダイでの提供にも対応しています。
最大24bit分解能や高速更新レートなど、用途に応じた選択が可能です。
Renesasは、産業分野向けにセンシングプラットフォームを提供しています。
センシング情報は、IO-Linkなどのインタフェースを通じて上位システムへ接続されます。
また、IO-Link通信用スタックを一体化したSSCや、IO-Link PHY ICも提供されています。
ロボティクス分野では、フォース・トルクセンシング用途への適用例があります。
関節制御では高精度な計測が求められ、SSCを利用することで、
・高精度制御
・MCU側負荷低減
・部品点数削減
につながります。
ロボットハンド用途では、ベアダイのSSCとセンサを組み合わせることで、配線削減と高精度な力検出が可能になります。
ZSSC3241は、抵抗型SSCです。
対応インタフェースは、
・アナログ出力
・電流ループ
・SPI
・I²C
などです。
広いブリッジ抵抗範囲(0.5kΩ~60kΩ)へ対応しており、内蔵診断機能も備えています。
用途例として、
・圧力センシング
・流量センシング
・レベルセンシング
などがあります。
ZSSC3281は、デュアルチャネル対応のSSCです。
抵抗式と容量式センサの両方に対応しています。
また、
・高分解能
・高更新レート
を両立するデュアルスピードモードを搭載しています。
産業用途やプロセス制御用途などへの適用が想定されています。
車載分野では、環境規制や電動化の流れを背景に、SSC市場が変化しています。
現在は、内燃機関(ICE)向け用途での利用が大きな割合を占めています。
一方で、
・ブレーキ
・サーマルマネジメント
などの用途は増加傾向にあります。
さらに、
・燃料エンジン/水素
・エアサスペンション
・クリーン化関連
などが成長市場として挙げられています。
用途ごとに必要な出力インタフェースや要求仕様に応じて、製品選定が行われます。
Renesasでは、SSC導入に向けたサポート環境も提供しています。
製品選定だけでなく、
・設定
・補正
・評価
まで含めた開発支援を行っています。
サポートツールを活用することで、設計から評価までの流れを支援します。
まとめ
SSCは、センサ素子から得られる信号を調整し、後段で扱える情報へ変換するためのデバイスです。産業・車載を含む幅広い用途で利用されており、さまざまなセンシング方式や出力インタフェースへ対応しています。また、製品だけでなく、補正やサポートツールも含めたソリューションが提供されています。本記事では、SSCの基礎から、産業・車載アプリケーション、製品選定、サポート環境までを紹介しました。
















