車載用途におけるUSB-CとパワーMOSFET
車載USB-Cは“電源”へ進化
USB-PDとMOSFETが支える次世代車載電源
スマートフォンやタブレットだけでなく、ノートPCや車載機器まで――
いま、あらゆる電子機器のインターフェースが「USB-C」へ統一されつつあります。
その背景にあるのが、USB Power Delivery(USB-PD)の急速な進化です。
かつて「5Vでスマホを充電する端子」だったUSBは、現在では最大240W(48V/5A)を扱う高出力電源インターフェースへと変貌しています。
特に車載分野では、
• ノートPC充電
• 後席エンタメ機器
• 高性能タブレット
• 車内アクセサリ
• 48V系電源システム
など、高出力USB-Cへのニーズが急拡大しています。
本記事では、萩原エレクトロニクス ウェビナー『車載用途におけるUSB-CとパワーMOSFET』をもとに、
• USB-Cがなぜ車載で重要になっているのか
• USB-PDはどのように電力制御しているのか
• 高出力化を支えるMOSFETや電源制御技術
• ルネサスのUSB-PDトータルソリューション
について解説します。
USB-Cは“単なる端子”ではない
USB-Cの特徴は、大きく3つあります。
① 超高速通信
最大80Gbpsに対応し、映像伝送も可能
② 大電力給電
最大240W(48V/5A)まで対応
ノートPCや高電力機器にも対応可能
③ 利便性
小型・薄型で、上下どちら向きでも挿せる。
つまりUSB-Cは、「通信」「給電」「利便性」を1本化したインターフェースです。
特にUSB-PDの進化により、USB-Cは“充電端子”から“電源インフラ”へ進化しています。
なぜUSB-Cが世界標準になったのか
USB-C普及を後押ししているのが、EUによる規制強化です。
EUでは無線機器に対し、「USB-Cインターフェース採用」を求める指令改正を実施
対象は、
• スマートフォン
• タブレット
• デジタルカメラ
• ヘッドホン
• 携帯ゲーム機
• ノートPC
など広範囲に及びます。
さらにAppleもiPhoneをLightningからUSB-Cへ移行
USB-Cは今や、メーカーを超えた世界共通インターフェースとなっています。
USB-PDはCC端子を使用して受給電や電力値を決定している
USB-Cの中で最重要となるのが「CC(Configuration Channel)」ピンです。
CCピンでは
• 接続検出
• 接続機器判定
• Source/Sink判定
• 電圧・電流交渉
を実施しています。
つまりUSB-PDは、「ただ電圧を流す」のではなく、通信しながら電力制御しているという点が大きな特徴です。
USB-PDは “ネゴシエーション(交渉)してから“ 電力変換を行う
USB-PDは以下の流れで動作します。
① 接続直後は5V
まず安全な5V状態で開始。
② Sourceが能力通知
「何V・何Aまで供給できるか」を通知
③ Sinkが必要電力を要求
受電側が必要な電圧・電流を選択
④ 条件一致で電圧切替
ここで初めて20Vや48Vへ移行
この仕組みにより、
・高出力
・安全性
・柔軟性
を同時に成立させています。
USB-PDの裏側で重要になるMOSFET
USB-PDが240W級まで拡張された背景には、高性能MOSFETの進化があります。
USB-PDシステムでは、
・Buck-Boost Charger
・Buck-Boost Regulator
・双方向電力制御
など、多数の電力変換回路が動作しています。
ここで中心となるのがMOSFETです。
MOSFETは、
・電力変換
・スイッチング
・双方向給電
・過電流制御
などを高速かつ低損失で実行
USB-PDの高効率化・小型化・高出力化を支えるキーデバイスとなっています。
ルネサスのUSB-PDトータルソリューション
ルネサスはUSB-PD向けに
・USB-PD Controller
・Buck-Boost Charger
・Battery Management
を組み合わせたトータルソリューションを提供しています。
単なるPDコントローラ単体ではなく
・充電制御
・電源制御
・バッテリ管理
まで含めた統合設計が可能です。
これにより、
・システム最適化
・開発期間短縮
・評価容易化
を実現しています。
USB規格そのものに関わるルネサス
ルネサスはUSB-IFのBoard Memberであり、USB Promoter Groupにも参加しています。
Promoter Group参加企業は、
• Intel
• Microsoft
• Apple
• HP
• STMicro
• TI
• Renesas
の7社のみ
しかも日本メーカーはルネサスだけです。
つまりルネサスは、「USB規格を使う側」ではなく「USB規格を作る側」でもあります。
評価ボードと開発環境も充実
ルネサスでは、
• 評価ボード
• Design Kit
• GUI評価ツール
• 回路図
• BOM
• PCBレイアウト
• サンプルコード
などを提供。
20V(SPR)から48V(EPR)まで、用途別の評価環境が整備されています。
そのため、「USB-PDをすぐ評価できる」環境が構築されています。
バッテリ管理も重要テーマ
高出力化が進むほど、バッテリ安全管理も重要になります。
ルネサスのFGIC(Fuel Gauge IC)は、
• 過充電検出
• 過放電検出
• 温度監視
• セルバランス
• FET制御
• 劣化検出
などを統合管理。
さらにΔΣADCを採用することで、
• 高精度電流測定
• 正確な残量検知
• 使用時間向上
も実現しています。
まとめ
USB-Cは今や
・通信端子
・充電端子
・映像端子
を超え、
「高機能な電源インターフェース」へ進化しています。
そしてその裏側では
・MOSFET
・Buck-Boost回路
・バッテリ管理・
・PDコントローラ
といった高度な電源制御技術が支えています。
車載分野でもUSB-PDの重要性は今後さらに高まり
・48V化
・高出力化
・双方向給電
・車載品質対応
が大きなテーマになっていくでしょう。
高出力USB-Cを支える「MOSFET」の重要性
車載電源の進化を支えるキーデバイスとは
前半ではUSB-CとUSB-PDの進化について紹介しました。
そして後半で語られたのが、その高出力化を支える主役デバイス「MOSFET」です。
USB-PDでは、
• 高電圧化
• 大電流化
• 高速スイッチング
• 発熱抑制
• 安全制御
が求められます。
これを実際の回路レベルで成立させているのが、パワーMOSFETです。
本章ではウェビナー後半の内容をもとに
• MOSFET市場
• 車載用途
• ルネサスREXFET
• 低損失技術
• 車載での実装例
について解説します。
MOSFET市場は“車載”が急成長
MOSFET市場は現在、非常に大きな成長分野となっています。
2024年時点で
・Si Power MOSFET市場:約110億ドル
・200V以下MOSFET市場:約80億ドル
という巨大市場に拡大しています。
特に注目されているのが車載分野です。
車載用途だけで約43億ドル規模となっており、EV化・48V化の進展に伴い、今後さらに拡大が見込まれています。
USB-PDの高出力化も、このMOSFET市場成長を後押ししています。
ルネサスは1970年代からMOSFETを開発
ルネサスは
・日立
・三菱
・NEC
の技術系譜を持つメーカーです。
1970年代には、最初期の縦型MOSFETを開発
さらに、
・トレンチ構造
・スーパージャンクション
・スプリットゲート構造
などを進化させてきました。
現在では年間200億個規模のMOSFETを出荷しています。
また、甲府12インチファブ稼働により、
・供給性向上
・コスト低減
・車載対応強化
も進めています。
車載では“低損失”が最重要
車載用途では
・発熱
・ノイズ
・信頼性
・小型化
すべてが厳しく求められます。
その中で重要になるのが
・RDS(on)
・Qg
・FOM
です。
RDS(on) MOSFETのオン抵抗
低いほど発熱が少ない。
Qg ゲート電荷量
小さいほど高速スイッチング可能。
FOM(RDS(on) × Qg) 総合性能指数
FOMが低いほど
・高効率
・低損失
・高速動作
を実現できます。
REXFETは“スプリットゲート構造”が特徴
ルネサスの車載MOSFETブランドが「REXFET」です。
REXFET最大の特徴は、Split Gate(スプリットゲート)構造です。
これにより
• 低RDS(on)
• 低ノイズ
• 高速スイッチング
を両立しています。
さらに、
• Cuクリップ構造
• 低インダクタンス化
• 高放熱パッケージ
も採用
車載で求められる高信頼性を実現しています。
REXFET-1とREXFET-2の違い
REXFETシリーズは用途別に最適化されています。
REXFET-1
低RDS(on)重視
主用途:
・モーター制御
・BMS
・OBC
・DC/DC二次側
100kHz以下の電力変換向け
REXFET-2
低FOM重視
高速スイッチング用途向け
・高効率DC/DC
・高速電源
・小型電源
などに適しています。
USB-PDのような高効率電源では、こちらの思想が特に重要になります。
車載の“ほぼ全部”にMOSFETが使われている
車載MOSFETは、
• BMS
• EPS
• HVAC
• OBC
• DC/DC
• ライト制御
• ドア制御
• モーター制御
など、ほぼ全ての電動機能に使用されています。
EVでは特に
• 高効率
• 高耐圧
• 高電流
• 高放熱
が重要になります。
USB-CとMOSFETは“同じ思想”でつながっている
ウェビナーでは、USB-CとMOSFETは別テーマではないと語られています。
USB-Cでは
・電力ON/OFF
・過電流保護
・過電圧保護
・発熱抑制
・スイッチング制御
が常に行われています。
そしてその中核にあるのがMOSFETです。
つまり、USB-Cの進化=MOSFET進化と言っても過言ではありません。
















