はじめに

現在、電子機器にはますます大出力が求められています。しかし、出力を大きくしようとすると基板サイズも拡大し、熱も基板サイズも出力とトレードオフとなっていて常に設計者を悩ませています。そこで新しいパワーデバイスとして注目されているのがGaNです。ただし、GaNパワーデバイスには種類があり、扱いにくいものや、特殊なパッケージのものがあります。本記事ではそれらの課題を解決できるルネサスエレクトロニクスのGaNソリューションをご紹介します。


GaNパワーデバイスとは?

GaNは窒化ガリウムの略で、ワイドバンドギャップ半導体の一つです。Siに比べ物性値に優れており、バンドギャップが3倍近く、絶縁破壊電界も高いため、高耐圧を実現できます。さらに、電子移動速度も速いため、高速スイッチングが可能です。スイッチング速度が上がることでインダクタなどの部品を小型化でき、基板全体を小さくすることができます。右下の図ではACアダプターにSi MOSFETとGaNそれぞれ採用した場合のサイズ感を示しています。




■GaNパワーデバイスの位置づけ

下記グラフは、横軸にスイッチング周波数、縦軸に負荷の出力を示しています。
・Si MOSFET:低コストで、家電製品から自動車用途まで幅広く使用。
・IGBT/SiC:高耐圧でハイパワー。自動車や電車などの大きなモータ制御用に採用。
・GaNパワーデバイス:スイッチング周波数が速く低オン抵抗を実現できるため、高効率・小型化を実現したいアプリに最適。具体的には、自動車用途だとxEVのオンボードチャージャ―、
DCDCコンバータ、産業用途ではデータセンターのサーバー電源、さらにACアダプタなど身近な製品にも活用され高効率・小型化を実現しています。


GaNパワーデバイスの市場動向

半導体市場動向調査会社であるYole社によると、GaNパワーデバイスは現在スマホの充電器やデータセンターのサーバー電源などで多く採用されていますが、今後は自動車分野での採用も拡大する見込みです。2023年から2029年にかけて、年平均成長率が41%と大きく成長し、さらに自動車分野では
79%も拡大すると予測されています。
*出典:Yole Group – Follow the latest trend news in the Semiconductor Industry


ルネサスエレクトロニクスGaNパワーデバイスの強み

ルネサスエレクトロニクスの生産工場はすべてISO9001とIATF16949を取得。
日本国内に品質保証部隊とアプリケーションエンジニアが配置されているため、日本国内での不具合解析や技術対応が可能で高信頼性のGaNパワーデバイスをご提供します。

現在のGaNパワーデバイスには大きく分けてE-modeとカスコードの2種類の方式があり、ルネサスエレクトロニクスのGaNパワーデバイスはカスコード方式を採用しています。


GaNパワーデバイスの構造と種類について

現在のGaNパワーデバイスは電流が横方向に流れる横型GaNが主流で、構造上二次元電子ガスという電子が高速で移動できるチャネルを形成しており、高速動作に寄与しています。
しかしそのままでは電流が流れ続けてしまうため、制御には工夫が必要です。ここでは代表的な2つの方式を紹介します。

E-mode方式:ゲート下にP型GaN層を挿入する方式
カスコード方式:GaNのゲート・ソース間にSi MOSFETを挿入する方式

ルネサスエレクトロニクスが保有するGaNパワーデバイスは下図の右側のカスコード方式を採用しています。


カスコードGaNパワーデバイスのメリットについて

下図はE-modeとカスコード方式のゲート耐圧、そしてオン/オフできる電圧について示しています。

E-mode GaNはゲートの下にp型 GaNを挿入することにより、ゲートの耐圧が低くなってしまいます。さらに通常動作させるゲート電圧の範囲は5-6Vととても狭く、ゲート耐圧に対してマージンが少なく制御が難しいという懸念があります。また、閾値も低いためセルフターンオンを防ぐため、オフさせるときは負のゲート電圧を印加する必要があります。

一方、カスコードGaNの入力はSi MOSFETを用いるため、ゲート耐圧20V・動作範囲8〜12VとSi MOSFETと同じであるため十分なマージンがあり、既存のゲートドライバを流用可能です。
またオフさせるときには負のゲート電圧を印加させる必要もありません。


E-mode GaNとカスコードGaNのゲート電圧について

E-mode GaNは、通常オンする電圧が5-6Vでゲート耐圧が7Vであるため、マージンが少なく、少しでもノイズが入るとゲート耐圧を超えてデバイスが壊れてしまいます。
一方でカスコードGaNは通常オンする電圧が8-12V、ゲート耐圧20Vと高く、マージンがたくさんあるため、少しノイズが加わってもデバイスが壊れにくいというメリットがあります。


E-mode GaNとカスコードGaNの部品点数について

ゲート耐圧の違いは周辺部品の数にも影響してきます。
E-mode GaNはノイズからゲートを保護するために、ゲート電圧をクランプするツェナーダイオードなどが必要となり、部品点数が増加します。また専用のゲートドライバを使用する
必要があります。
一方、カスコードGaNはゲート電圧をクランプするツェナーダイオードは不要で、通常のSi MOSFETと同様の最低限の部品点数で構成できます。ゲートドライバも汎用品を使用できます。


E-mode GaNとカスコードGaNのパッケージラインナップについて

E-mode GaNはノイズに弱く、挿入タイプのパッケージではリード部分の影響でノイズを受けやすいため、ほとんどが表面実装タイプのパッケージしかありません。
一方、カスコードGaNはパッケージによるノイズの影響を受けにくく、Siのデバイスと同じパッケージのラインナップ展開もしているため、Siのデバイスから容易に置き換えできるというメリットがあります。ルネサスエレクトロニクスはこれらのメリットを踏まえカスコード方式のGaNパワーデバイスを採用しています。


ルネサスエレクトロニクスGaNパワーデバイスのラインアップについて

ルネサスエレクトロニクスのGaNパワーデバイスは、低電流から大電流、パッケージも小型のものから高出力のものまで取り揃えています。
例えば、低出力・小型タイプのQFN(5×6)パッケージから、汎用的なTO-252、自立タイプのTO-247、高出力の上面放熱TOLT(10×10)パッケージまで数多くそろえています。
オン抵抗は計画中のものも含め、2.5mΩから480mΩ品があります。またベアダイでの提供も計画中で、並列してモジュール化をして頂くことで、より高出力化を実現することが可能です。

ルネサスエレクトロニクスGaNパワーデバイスの詳細については下記リンクよりご覧ください。
GaNパワーデバイス製品一覧 | Renesas ルネサス
GaNアプリケーション例 | Renesas ルネサス

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