シリコンを超える性能! Renesas GaNスイッチの秘密

ルネサス エレクトロニクス GaN(窒化ガリウム)スイッチ
1. はじめに
•ルネサスのGaN(窒化ガリウム)パワースイッチは、低耐圧のSi MOSFETと高耐圧のGaN HEMT(ノーマルオン)をカスコード構成で組み合わせたものです。(Figure 1)

•低耐圧Si MOSFETのゲートに印加する電圧によって、GaNパワースイッチのON/OFFを切り替えることができます。
•低耐圧Si MOSFETはボディダイオードの容量が小さいため、逆回復電流も小さくスイッチングも速くスイッチング損失が抑えられます。
2. ルネサスGaNスイッチの動作モード
ルネサスGaNスイッチは以下の3つの動作モードに分類されます。GaNの閾値は負であることに注意してください。
2.1 順方向ブロッキング(VGS=0, VDS>0)
VDS < -Vth(GaN):Si MOSFETはオフ状態、Vds(Si MOSFET)=Vsg(GaN)<-Vth(GaN)なのでGaNはオン状態で、カスコード全体としてはオフです。GaNの閾値はSi MOSFETの耐圧よりも低く設定されているので、Si MOSFETに加わる電圧がSi MOSFETの耐圧を超えることはありません。
VDS > -Vth(GaN):VDSが大きくなると、GaN HEMTのゲートに印加される電圧が負の方向に向かって大きくなり、オフしきい値を超えると、GaN HEMTがオフします。

2.2 順方向導通(VGS > Vt,Si, VDS > 0)
VGSがオンしきい値を超えてSi MOSFETがオンになることで、GaNスイッチは導通状態となり、電圧降下はSiとGaNのオン抵抗の合計で決まります。
VDS=ID*(RDS(on), Si + RDS(on), GaN)
2.3 逆方向導通(VDS < 0)
VGS = 0:Si MOSFETがオフの状態で、ボディダイオードとGaNチャンネルを通じて電流が流れます。
この場合の電圧降下は下記の式になります。
VSD = VSD, Si + IF*RDS(on), GaN

VGS > Vt,Si:Si MOSFETをオンにすることで、逆方向の電圧降下を低減できます。
VSD = IF*(RDS(on), Si + RDS(on), GaN)

3. 逆回復特性の検証試験
よりGaNスイッチに対するSi MOSFETの良さを理解していただくため、同じく600V耐圧のルネサスGaNスイッチとCoolMOS(低Qrr品のSi MOSFET)に対し逆回復特性試験を実施しました。
試験の流れは以下の通り:
•まず、制御用スイッチQ1をターンオンし、インダクタL1とQ1間に電流が流れます。
•次に、Q1をターンオフし、インダクタ電流が流れ続けようとしてDUTのソースからドレインに電流が流れます。
•最後に、Q1を再びターンオンし、DUTのソースに流れる電流がなくなるまでの電荷量と時間を観察します。

下図左側がCoolMOS、右側がルネサスGaNスイッチの逆回復特性試験の結果ですが、 CoolMOSのQrrが1000nCに対し、ルネサスGaNスイッチのQrrがわずか40nCです。
※CoolMOSは400A/usでの動作が不安定のため、100A/usでの試験となりますが、ルネサスGaNスイッチのQrrは400A/usでも100A/usでも結果が変わりませんでした。

さらにルネサスGaNスイッチの逆回復電荷の内訳はGaN HEMTの容量性電荷と低耐圧Si MOSFETの寄生ダイオードの逆回復電荷に分けられますが、IF=0の状態では、低耐圧Si MOSFETによる逆回復電荷は0であるため、下記結果からGaN HEMTの容量性電荷が約35nCで、トータルの逆回復電荷40nCのうち、低耐圧Si MOSFETの逆回復電荷がわずか5nC(トータルQrrの14%)です。

4. 結論
ルネサスGaNスイッチは低耐圧Si MOSFETとGaN HEMTのカスコード構造ですが、Si MOSFETはGaNスイッチをON/OFFさせる役割にとどまり、耐圧はGaN HEMTに持たせることで、Si MOSFETは低耐圧で済むので寄生ダイオードの容量も抑えられます。
ルネサスGaNスイッチは既存のSi MOSFETに比べ低Qrrであるため、高速スイッチングが必要なインバータ回路や、トーテンポールPFCのような電流が双方向に流れるアプリケーションでは損失を抑えられるため適しています。
■本ページの内容の詳細は下記アプリケーションノートをご参照ください。
Characteristics of Renesas GaN Power Switches
■ルネサスエレクトロニクスGaNパワーデバイスの詳細については下記リンクよりご覧ください。